A.I.lab(エー・アイ・ラボ)- 人間の、人間による、人間のための人工知能メディア

人工知能の考察、ディープラーニング、機械学習、各種アルゴリズムなど。

人工知能の未来は量子コンピュータとともにある

人工知能は幾つかのフレームワークに集約していく傾向があり、開発者にとっては、あまり夢のない世界観になりつつある。

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歯車のひとつにはなれるかもしれないが、根本的なイノベーションができないんじゃないか、そんな感に飲み込まれそうになる。

そんな中、ひとつの希望をみつけた。量子ビット

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量子コンピュータが鍵

量子ビットとは?

量子力学に基いて状態が決定する情報の最小情報であると定義できるようだ。

これを理解するためには量子力学に少し足を踏み込む必要があるのだが、なんとも小難しい言葉で語られてるため、興味のある方のみ、個別にお調べいただくことをおすすめする。

この量子ビット、なにがすごいというかというと、演算プロセスを覆す技術であるという点が一番の革新的な部分になっています。

デジタルというのはしばしば「0と1の世界」と説明されます。これは、わかりやすく言えば、ハードの回路にトランジスタと呼ばれる信号を送る部品に紐付いていて、このトランジスタはONとOFF2つの信号しか送ることができない。つまり、ボタンを押した状態と押していない状態ということだ。

なぜ、デジタルが「0と1」なのか?という疑問があったとすれば、それはこのハードの信号の仕組みに紐付いていると理解するとスッキリする。実際のプロセスはデジタルという概念があって、それを実現するためにトランジスタが誕生したということだとしても、理解しやすいようにそうしておこう。

つまり、モールス信号のようにONとOFFの組み合わせに意味を持たせて、表現を広げていったのが現在のデジタルの世界である、その意味を持たせるために使われているのが数学で、2進法や普段使っている0-9の数字で理解する10進法だ。

つまり、この「0と1」に縛られてきたのが今の世界。

デジタルにおける量子力学的な考え方はこの「0と1」のどちらも持つ状態を定義し、それに基づいて計算の答えを出すというもので、これこそが、大幅な計算時間の短縮、省エネルギーな計算ができるとして注目されている分野なのである。

ポイントは「0と1」どちらも持つ状態という定義だ。

量子ビット人工知能

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不確実をとらえる

昔から研究されているというのは上記の説明で想像がつくと思いますが、実際GoogleApple、それからIBMなど多くの先進技術を扱う企業でも量子力学の応用が進んでいて、実はすこしずつカタチになってきている現状があります。

量子コンピュータという言葉を聞いたことがありますか?

これは「京」などのスーパーコンピュータと呼ばれるハードウェアをはるかに超える演算能力をもつコンピュータです。

たとえばGoogle, NASA, 大学宇宙研究協会 (USRA) が共同で、カナダの量子コンピュータベンチャーD-Waveの製品を使用した研究機関「量子人工知能研究所」を設立し、もくもくと量子×人工知能の研究を進めている。

私は以前からディープラーニングについても疑問を持っていました。人間の脳は一瞬で決断を下すことができるし、そのプロセスに何百台ものパソコンと同レベルの労力を費やしているとは思えなかった。

これを説明するものこそ量子力学だと確信したのです。

既存のアルゴリズムを一瞬で超越する技術

既存のアルゴリズムはほとんど0と1の世界を念頭に作られている。量子アルゴリズムが解明されてくると、これらのアルゴリズムは過去の遺産となることは間違いない。

そもそも数字を物質的に「これが1」「これが2」と捉えないため、演算の考え方を理解するのにも苦労する。

そもそも不確定な状態の「0と1」という状態を持っているという概念が超人的であり、人間の日常の中では捉えることが難しい概念なのである。

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量子コンピュータ人工知能

しかし、0と1を両方もっている状態から「0」になるか「1」になるか確定した瞬間にはもう答えがでているということであって、一瞬で答えがでるのである。計算量が増えれば増えるほどコンピュータの負荷が増えるという常識が非常識になるのです。

これがあたりまえになれば、既存のアルゴリズムは限られた用途で使えばよくなるということになり、量子アルゴリズムの時代へと移行することだろう。

ハードウェアの問題にたどりつくまで

おわかりかと思いますが、この量子アルゴリズムを日常的に使用するためには「量子ビット」という概念を理解してくれるコンピュータが必要になる。つまり、わたしたちが使っているパソコンそのものが次世代に世代交代したときが量子があたりまえの世界となる。暫く先の話である。

とはいえ、この量子ビットの考え方は既存のアルゴリズムに応用ができる。実際にディープラーニングにも量子力学は応用されていているのかもしれません。

ハードウェアの壁に突き当たるまでは、ソフトウェア上でのバーチャル量子ビットが発展していく確率は高い。

ディープラーニングを疑うことに未来がある

もちろん、ディープラーニングを応用したプログラムというのは素晴らしくよくできていることは言うまでもありません。それが常識化していくことも自然の流れだと思います。

ただ、疑いをもつことが次世代を切り開くということに繋がるという事実も忘れてはいけません。

量子力学の研究も、すべては仮定から生まれています。

常識ではありえない仮定が未来を作ってきているというのは仮定ではなく、事実です。

プログラマーの世界では、「フレームワーク」という言葉が便利に飛び交っていて、根本的改良をする人が少ないのだと感じています。

それは非常にもったいないことだし、プログラミングの醍醐味は「つくること」だと個人的に思っているため、わたしは「作業者」にはなりたくないのです。

考えてつくるということは未来をつくっていくことだと思いながらいろいろなものを疑えば、きっと真実にたどりつけるはず。

という筆者のプログラマー的偏見はさておき、こうした根本的な可能性を秘めた分野は、パイオニアになれるチャンスを秘めているし、既存のものを改善するのとは別の方向で興味をもつと面白いのではないでしょうか。

みんなが感じる未来はみんなの日常にある

技術的なことは一旦おいておいて、わたしたちが「こんな時代になったんだなぁ」と振り返ってしまうような時代はすでにこうした先進技術がカタチになり、且つみんなが手に入れられる時代になった時にくるのだと思います。

だからこそ、汎用的に高機能が実現できるということは社会的に意味を成します。

みんなの今持っているパソコンでもっと未来感あることが続々とできていくかどうかにわたしたちの未来が集約されています。

量子力学の分野は哲学的であり、現実的であり、概念的であるというところが掴みづらいのですが、非常に夢のある分野だし、これからもっと注目されていくのではないでしょうか。

小ネタですが、量子力学の応用の身近な例でいうと、iPhone7シリーズなどに搭載されている「タップティックエンジン」です。ボタンではないボタンとして一時期注目されていましたが、実はこれ単純な話ではないみたいです。

このボタン部分にはある特定条件下で通電する素材が採用されており、押していない状態というのはまだ結果が確定していない状態であり、ボタンを押していくと、その素材の分子が圧縮され、特定の圧力がかかると通電してプログラムが動作するという仕様みたいですね。

つまり、量子力学的に、「ボタンを推していない状態」を「0と1両方もつ状態」と定義しているということだろう。

みなさんも、量子力学の一歩を歩んでみてはいかがでしょうか。